• 不動産活用のこと
  • 2023.10.03
揉めない不動産相続。遺産分割で、親子関係、兄弟姉妹関係を気まずくしないために

相続による遺産分割と言うと、多額の財産についての親族同士のドロドロした話し合いをイメージする人もいるかもしれません。

2019年における家庭裁判所への遺産分割協議調停の申立件数は、全調停事件の約12%に当たる15,842件でした。
2012年以降、およそ15,000件前後で推移していますが、約40年前の1985年と比べると約2.6倍にまで増えています。

ところが、2019年のデータでは遺産分割事件のうちの約77%は、5,000万円以下のものが占めています。
出典:厚生労働省「令和元年(2019)人口動態統計(確定数)の概況」、最高裁判所「令和元年司法統計年報 家事編」第2表・ 第52表

遺産分割は件数も少なくなく、なおかつ必ずしも大金だけが対象ではないのが実態ですので、
当事者になるとそれまで仲の良かった相続人同士の関係が破綻してしまう可能性も十分にあるのです。

そこで今回は、遺産分割で揉める背景や事例、それに対する対策や、心がまえも含めてご説明します。

 

遺産分割は、なぜ、どのような場合に揉めるのか

被相続人が死亡すると、残された遺産は相続人の間で共有されます。
遺産を共有のままにしておくやり方もありますが、それでは自由に使えなかったり処分できないなどの不都合が生じます。

そこで、遺産分割によって相続人同士で遺産を分け合うことになるのです。
相続人同士がずっと仲が良く、関係がうまく行っているという人も少なくないでしょう。

ただ、お金が絡む話のため、自分の思いや主張をそれぞれ何とか通そうとし、
譲れないラインも高くなることで揉めるのです。

次に、どんな場合に遺産分割で揉めるのか、主な事例を5つご紹介します。

相続財産に不動産が含まれている場合

2019年の司法統計の遺産分割についてのデータでは、遺産分割が調停に発展したケースのうち、
相続財産に不動産が含まれるケースが約8割を占めるほど、不動産の存在は大きいです。

現金とは異なり、土地などの不動産は相続人同士で均等に分割することができないため、
お互い不公平感から揉めてしまうケースが多くあります。

また、不動産については、「親が大切に残してくれたものだから残したい」と考える人、
「誰も住んでいないなら、早く売ってしまいたい」と考える人との食い違いが生じます。

さらに、相続人の1人が取得する場合は他の相続人に代償金を支払う必要が出てきますが、
その代償金を支払えなかったり、代償金をいくらにするかで揉めることもあります。

親の介護負担に不公平感がある場合

遺産相続については、介護の寄与度合いによる問題も生じます

例えば、亡くなった母親の介護を受け持っていた兄と、
そうでない弟とでは介護で感じた負担について不公平が生じることがあります。
つまり、介護での貢献度が高い兄としては、介護をしてこなかった弟より多くの取り分がほしいと考えることが多くなるのです。

こうしたケースでは、民法の規定(寄与分)による不公平感の解消が認められています。
ただ、この寄与分を認めるか、認めるとしたらどの程度の額かなどについても、揉めごとの要因です。

相続人同士の意思疎通が不十分な場合

相続人同士で日頃のコミュニケーションが不足していると、
相手の考えを邪推したり、お互い主張を譲れずに折れないことがあります。
「私が全部もらって当然だ」、「あんな人に財産を渡せない」といった極端な感情論に陥る可能性があるのです。

また、音信不通などで全く連絡もつかないなどのケースも、揉める要因です。

生前贈与がある場合

生前贈与による不公平感も、相続で揉める要因となります。
相続人のうちの1人が、被相続人から生前に多くの財産を得ていたというケースです。

生前に受けたこの多額の財産(姉妹のうち姉だけが留学させてもらったなど)が「特別受益」に当たるのか、
また「特別受益の持ち戻し」を行うかどうかで揉めるのです。

「特別受益」とは、相続人が複数存在する場合に、一部の相続人が生前贈与や遺贈などによって被相続人から特別に得た利益のことです。
相続人の中での公平を期すために、この特別受益分を差し引いて相続分を算出することを、「特別受益の持ち戻し」と言います。

また、生前に受けた贈与については自分から明かさないことが多いため、周囲から指摘されて初めて露見することが多いです。
後になって、「贈与は得ていない」だとか、「それは特別受益に該当しない」などの議論になって、揉めることがあるのです。

前妻や前夫の子供が現れる場合

被相続人に前妻や前夫との間、または内縁者との間に子供が存在していたというケースもあります。
しかし、その子供については全く接点がなかったり、存在すら知らないこともあります。

ただ、そうした子供も相続人であることは確かなため、遺産分割についての話し合いを行う必要が出てきます。
現在の妻、夫との子供は自分に有利に運ぼうとしますし、前妻・前夫や内縁者との子供は均等な分割を望むため、揉めることが多いのです。

遺産分割で揉めないための対策とは?

遺産分割で揉める際の主な5つの例をご紹介してきました。
揉めごとは極力避けたいですが、ではどのようにすれば揉めごとを避けることができるのでしょうか?

大きく3つの対策をご説明します。

公正証書遺言を作成する

1点目は、生前に遺言書を作成することです。
遺言書は、民法の法定相続に優先して適用されます。

遺言書で遺産の相続方法を指定することで、誰がどの程度遺産を得るのかがわかりますし、
相続人同士による遺産分割の協議も不要となるため、揉めごとを防ぎやすくなります。

また、遺言書には次の3つの種類があります。

1.自筆証書遺言

遺言書を作成する人が、財産目録以外の遺言を自筆で記す遺言書です。
自宅で気軽に書けること、作成費用がかからないなどのメリットがあります。

原則自分で保管する必要がありますが、紛失や書き換えなどのリスクもあるため、
2020年から法務局で保管してもらえる制度(自筆証書遺言保管制度)が始まっています。

2.秘密証書遺言

遺言内容の全てを秘密にできるものですが、その存在を認証してもらう公証役場では内容の確認まではされないため、無効になる恐れがあります。

3.公正証書遺言

公証人が作成し、公証役場で保管されるため、紛失や偽造などのリスクを防ぎやすくなることもありますので、
遺言書を作成するなら、信頼性の高い公正証書遺言が望ましいです。

なお、公正証書遺言では、公証役場へ支払う手数料がかかったり、
資料の準備などの煩雑さがあることも合わせて押さえておきましょう。

相続問題に詳しい弁護士に相談する

2点目は、専門家である弁護士に相談することです。

感情的になるだけでは話し合いになりませんが、
専門家による法律面からのアプローチによって、関係者が納得しやすくなります。

また、遺言書の検認や相続財産の調査、調停にまで発展した場合は家庭裁判所に提出する書類を作成するなど、複雑な手続きが多数発生します。

しかし、弁護士に相談することでこうした煩雑な手続きを代理してもらうことができます。
なお、弁護士にもそれぞれ得意分野や専門があるため、相続問題に詳しい弁護士に相談すると良いでしょう。

生前から相続人同士で話し合いをする

3点目は、被相続人が生前から財産についての考えを伝えたり、相続人同士でも話し合いをしておくということです。
普段から接点がある間柄でも、相続の局面では揉めごとは起きてしまうこともあります。

後々、揉めないために重要なので、生前からできるだけ話し合いの機会を大切にしましょう。

遺産相続で揉めないために

遺産相続で揉める背景や、揉めごとを防ぐためにはどうしたら良いかについて見てきました。
家族や親戚同士であれば、好き好んで揉めたいという人は少ないでしょう。

しかしそれが、被相続人の死亡によって急に状況が変わってしまうこともあります。
揉めごとを防ぐには、公正証書遺言の作成や、相続問題に詳しい弁護士への相談、
被相続人も含め関係者間で話し合いの機会を設ける必要がある旨を紹介してきました。

遺産相続について考えたり、相続人同士が話し合ったりとなるべく生前から準備を心掛けていきましょう。
遺産相続での揉め事は、揉める時間が長引くと精神的な負担も大きくなってしまいます。

相続人同士に一旦入った亀裂はそう簡単には修復できず、以後大きなしこりとなって、
長年重苦しい気分で過ごすことになる恐れもあります。

より納得できそうな落としどころを見つけられるように、不動産の分野であれば、
相続不動産を専門とする会社に相談するという方法もあります。

不動産の相続に関してお困りの際は、よろず屋不動産までお気軽にご相談ください。